Skoleと日常のクロッシング その2(report 0513)

2017年5月13日、ゴールデンウィークの喧騒がうっすらと昔のことのように思われ始めた曇り空のそんな日に、Skoleのmethod2「気づく」が開催されました。本日の講師はプラユキ・ナラテボー先生です。

私(越川陽介)がプラユキ先生と直接お話をさせていただくのは今回が初めてですが、実は1年前の2016年5月21日に関西大学にて催されたプラユキ先生と池見先生のワークショップが初めての(一方的な)出会いでした。その際にもタイのお話を拝聴し、また、手動瞑想の体験しました。ちょうどその頃、Skoleのサポーターとしての体験や、池見先生が主催されているサンガで青空フォーカシングを体験していたことから、仏教や瞑想に興味を持ち始めていた頃でした。それから1年ほど経ち、改めてプラユキ先生のお話をお伺いできるため、どの様な受け止め方の変化があるのかと、当日を迎えるのをとても楽しみにしていました。

まずは各回の講師の先生をつないでくださる岡村心平さんの先生同士のクロッシングから始まりました。

前回のテーマは「感じる」でしたがその裏には「コトバ」がテーマとしてあったと岡村さんは語ります。 その「コトバ」は自分の感じていることを言い表すとても大切な要素ではありますが、一方ではこの「コトバ」の副作用もあるとのことでした。今回は「コトバ」の違う側面も学べるのでは? とお話しされました。

《この日に教わったこと》

・仏教が息づくタイでの生活

・仏教では何を語っていたのか

・瞑想にも種類がある

・集中系の瞑想を体験: 呼吸の瞑想

・気づく・観察・洞察系の瞑想を体験: 手動瞑想, 歩行瞑想, 呼吸の瞑想

 


【仏教が息づくタイでの生活】  

まず冒頭に、タイでの一日の生活を紹介していただきました。

タイにはたくさんの寺院があり90%が上座部仏教で、戒律に基づいて生活しながら瞑想や修行をしていて、在家の人たちは在家としての戒めを保ちながら、僧侶を支えながら生活しているようです。また、オリジナル性を大切にしており2500年前からのファッションである布一枚の衣装を今も大切にして、シンプルな生活を送っているとのことでした。

そこで印象的だったシーンは、僧侶へ托鉢をしている母親の姿を見た子どもが「わたしもわたしも」といって母親の姿を真似て托鉢をするシーンでした。このようにして親から子へと脈々と続いている仏教への尊敬や文化がタイには根付いているのだなと感じました。

また、プラユキ先生の住まわれている寺院の紹介もしていただきました。森の中にある僧房では、3畳ほどのスペースで寝泊まりをしながら修行をされているそうです。プラユキ先生が出家した当初は電気が通っていなかったこともあり、夜はロウソクだけの生活をしていたそうです。時代の流れから電気が通るようになり、最近ではネットワークの電波も飛ぶようになったそうです。プラユキ先生もより多くの人への仏教の発信をするためツイッターを始めたそうです。昔ながらの辻説法を現代風に行った”ツジッター説法”をされているようです。ご興味を持った方は是非フォローされてみてはいかがでしょうか。

 


【仏教では何を語っていたのか】

日本において“仏教”と聞くと、思い浮かぶのはお葬式のシーンではないでしょうか? または安直に“苦しみ”や“悟り”という言葉を結びつけて「人生苦しいもんだと悟って、苦しみながらそれを抱えて生きていこう」というような理解をしている人もいるかもしれません。これらのイメージや理解は仏教のスタートで語っていたものとは距離があるとのことでした。

プラユキ先生は、本来ブッダが提唱したものは「苦しみに対する非常に実践的なもの」だったと語ります。 「すべての苦しみを滅していく」というのがブッダの教えであり、その教えに従い実践していくと徐々に苦しみを減らしていき、最後には苦しみを滅し尽くすことができるとのことでした。このことを簡単な図を用いながら説明していただきました。

①苦しみにちゃんと目を向ける

まず、苦しみがあることにちゃんと目を向けることが大切であると話します。苦しいものから目を背けて、心地よいものばかりに目を向け続けていくと、その瞬間は良かったとしても苦しみは変わらずそこに在り続けます。ですから、まずは苦しみがあることを認知することが大切です。「苦しみがある」ということと「苦しんでしまう」ということは同じではなく、苦しみがあることを気づくことで、苦しみをなくすことのスタート地点に立つことができます。

②苦しみには必ず原因がある

また、苦しみは神様から与えられたものだ、前世の行いによるものだ、という考え方もありますが、ブッダは苦しみには必ず原因があると説いています。苦しみは、何かを求める衝動的な心の動きが原因で、そのことをぐっと握りしめてしまう“執着”によるものだとしています。

③苦しみは滅することができる

このように苦しみには原因があり、誰しもさまざまな苦しみを抱えています。しかし、その苦しみを滅することは誰にでもできると説いています。

④苦しみを解決する方法がある

そして、ただ単に、苦しみがあるということを分かるだけではなく、それをなくすための方法があるからそれを実践していこう、ということまでが一つのコンセプトとしてブッダは提唱したようです。

解決方法として身体的、言語的、こころの行動をそれぞれ実践していくと良いとされています。その解決する方法のひとつとして《瞑想》があるとのことです。《瞑想》はこころに直接働きかけていく方法で、それをうまく用いることで、苦しみや悲しみ、怒り、自信のなさなどが消えていきます。こころがクリーンになり、明晰に物事が考えられます。また、意識がはっきりして、充足感やイキイキ感が蘇り、思いやり、愛や慈悲が溢れてくるようになります。このように、こころへの適切な働き方ができたら、誰しもが“こころのクオリティ”をアップしていくことができるとのことです。

 


【瞑想にも種類がある】

 

瞑想って何?

プラユキ先生は瞑想を「目には冥いこころの相への実践的アプローチ」として説明されました。目には見えていない心のレベルの相へアプローチしていく方法が瞑想であり、苦しみから自由になるために、瞬間瞬間のさまざまな出会いに対して、自覚的に対応していく力を培い、こころを育てていくための訓練をしていくことです。

人は、他人に出会うだけではなく、一人でいたとしても、香りや音、食感や景色など、さまざまなものと出会います。そして外界だけではなく、自分自身が感じられる思いや感情にも出会います。このようなさまざまな出会いを、気づき、受け止め、より良い選択肢を自分が主体的に取れることが“マインドフルネス”の重要な視点だそうです。

二つの瞑想――“止”と“観”

《瞑想》にはふたつの種類があります。ひとつは“止”です。サマタとも呼び、こころをクリアにしていくための作業として、ひとつの対象に繰り返し注意を「集中」していく瞑想のことを言います。瞑想という言葉を聞くと、お寺で座禅を組みながら座っているイメージが浮かぶかもしれません。そのイメージはどちらかというとこのサマタのイメージのようです。

そしてもうひとつが“観”です。昨今耳にするようになった“マインドフルネス”の原型としてこの“観”があります。ヴィパッサナーとも呼ばれ、「集中」系のサマタに対して、ヴィパッサナーは「気づき・観察・洞察」系の瞑想と言えるようです。マインドフルネスは集中そのものではなく、いま起こっていることを“ありのまま”のこころで気づけることが大切です。日常生活では自身の思考パターンがあり、物を見るときもフィルターがかかっているわけですから、そのフィルターを入れずに見ていくことがポイントであるとのことです。

 


 【集中系の瞑想を体験――呼吸の瞑想】

《瞑想》や、苦しみのサイクルから抜け出すための方法などをレクチャーしてもらった後に、集中系の瞑想として「呼吸の瞑想」を教えていただきました。この集中系の瞑想では、意識を没入させることが大切です。息を吸う時、吐く時に数字を数えながら行うことで息に集中することがポイントでした。

 


【気づく・観察・洞察系の瞑想を体験――手動瞑想、歩行瞑想、呼吸の瞑想】

今回のメインである“マインドフル瞑想”の実践では、手動瞑想、歩行瞑想、呼吸の瞑想の三つの種類をレクチャーしていただきました。ブラユキ先生が修行されている寺院で推奨されている手動瞑想は、14手の動作を繰り返して行う瞑想です。

この「覚醒」系の瞑想は、日本に仏教が伝来する過程で消えてしまった“気づき”を大切にした瞑想です。こころの構えを作らずに“意識の目”で手の動きを見ていくことがポイントです。プラユキ先生は手の動きやその感覚をグググググーっと集中してみるのではなく、パッ! パッ! パッ! と、ひとコマひとコマ見ていくのがポイントで、「グー系の集中系」と対比して「パー系の覚醒系」とお話しされていました。私がその話を聞いた時、まるで覚醒系の瞑想はカメラで撮られた一枚一枚の写真のように「いまここ」を感じているなという想像が浮かんできました。集中系は、そんな一コマ一コマを一枚づつ滑らかな動きになるように丁寧につなぎ合わせた、アニメーションのように感じました。

そして、自分の意識は過去でも未来でもなく動かしている手に注目することも大切です。また、虫の目のように一つの感覚にばかり集中するのではなく、鳥の目のように俯瞰的に全体を見るのも大切とお話しされていました。

だんだん手動瞑想を続けていくと、ボーッとしてきたり、過去や未来のことが浮かんでいる自分に気がつくかもしれません。それはチャンスだとプラユキ先生は語ります。「集中できていない自分はダメだ!」と自分を責めずに、出てきたさまざまなものに「OK~」と声をかけ、認めてあげましょう。そして小さな子どもをあやす様に「よしよし」します。そうすると、今まで浮かんできたさまざまな思いが一瞬消えます。

場合によってはまた出てくるでしょうが、それをどんどん繰り返すことで、受容力や共感力を高めることにつながるそうです。

ワークのなかでプラユキ先生はいくつも、覚醒系の瞑想をするうえで大切なポイントを説明してくださいました。しかし、どうしてもそのようなポイントは、「遵守しなければならぬもの!」と、とらえてしまいがちです。そんな場の空気を察知したのか、絶妙なタイミングで参加者の皆さんに声かけするプラユキ先生の声には、うまく言葉では言い表せませんが、「こんな感じでもいいんだな」と思わせてくれるような、不思議な安心感が感じられました。

そして、瞑想中に出てくる自分の“コトバ”……「正しい瞑想じゃない。できていない私はダメ!? ちゃんとしなきゃいけない」など不安や疑念ですが、これに没入していってしまうと、それは瞑想とは違う、何か別の苦行になってしまうんだろうなと思いました。これが冒頭の心平さんが話した“コトバ”の副作用としての側面でもあるのではないのかなと感じました。「覚醒」系の瞑想で行われていることは、「ありのままを、今ここで気づいておく」というシンプルなことです。だからこそ“コトバ”で不安や疑念という味付けしたくなってしまうのかもしれません。

 


【日常とSkoleのクロッシング3――帰り道とマインドフルネス】

今回皆さんと一緒に勉強した手動瞑想では、大切なポイントがいくつかありました。そのひとつとして「目を開けて瞑想を行う」ことがありました。

瞑想というと目を閉じて行うイメージが一般的かもしれませんが、それは「集中」系の瞑想のイメージです。一方「覚醒」系の瞑想では目を開けて行うことが多いようです。理由として日常生活のそのライブ感のなかで、その瞬間瞬間の自分自身の心の動きや外界と自分の感じとの双方向を理解できるようにするために行うようです。このポイントからは、「覚醒系の瞑想は日常の中に落とし込みやすい」ことが考えられるのではないでしょうか。

「集中」系の瞑想でしたら、集中できる環境の設定がとても大切なように思いました。静かな場所、動かずにひとところに止まること、集中するための時間を取ることなど、実施をするまでに越えないといけない段階がいくつかあるように思いました。一方「覚醒」系の瞑想は、用意する環境は特になく、あるがままに受け止める・認識する、ことに尽きるのだろうなと考えました。そう考えると日常のちょっとした時でも今ここをあるがままに認識することはできるのではないでしょうか。

 

例えば仕事終わりの帰り道を想像してみてください。

仕事終わりの帰り道、締め切りが間近のタスクが終わらず3時間の残業を終えたのち、それでも仕上げられずに夜道を歩いて最寄駅へ向かう。そんな帰り道、頭の中は終わらないタスクをどうやって期限までに仕上げるか、でいっぱいになっていて、気がついたら駅の改札まで歩いてきていた。

まさに今回のセミナーでも話題になった、「我知らずのうちに一つのことに没入している」状態でもあると思うのですが、こんな帰り道でも、今ここに注意を向けてみると、さまざまなことに気づくことができます。足を前に出して歩いているということに気づいておく、飲み屋さんの提灯にじんわりと赤い光が灯っていることに気づいておく、暗がりの道に猫のフンが落ちていることに気づいておく。タスクをどうやって仕上げるかを気にしていることに気づいておく、そんな自分をいることを受け止める、気になっているんだなということを理解する。また今ここに注意を向ける、最寄駅に電車が近づくアナウンスに気づいておく……。

 

仕事終わりの帰り道も、このようにしてみてみると“マインドフルネス”の練習になります。「覚醒」系の瞑想ですので、没入しすぎて車にひかれることもありません。このように帰り道だけではなく、日常のふとした時に、今ここに意識の目を向けることを繰り返していくことで、こころに安らぎや豊かさが日常生活を送るなかで自然と生まれるのではないかなと思います。プラユキ先生はセミナーのなかで、こうもお話していました――「気づくことで工夫ができる、だから気づくことで明日が変わる」と。

 

「“気づいたことで変わった明日”を今日また気づくことができる」――そんな風になれたら素敵だなと思います。

 

 



次回は藤本靖先生で、methodは「つながる」です。どんなことが学べるでしょうか?! 次回も楽しみです。

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