Skoleと日常のクロッシング その3(0610)

梅雨の季節にもかかわらず、ふっと夜が涼しい、そんな6月の土曜日にSkoleのmethod3「つながる」が開催されました。 本日の講師は藤本靖先生です。

今までの講師の先生と異なり藤本先生にお会いするのは今回が初めてです。私(越川陽介)の普段の仕事はデスクワークが中心で、体全体が固まってしまっていることに悩まされていることや、楽器を演奏することが好きで、演奏する上で無駄のない体の動かし方に興味があることから、以前からボディワークには関心を持っておりました。アレキサンダーテクニックの一日ワークショップを受けたことはありますが、一方で、ロルフィングは言葉として見知ってはいたものの実態は全くわからなかったため、今回も楽しみにしていました。

 

○ 岡村さんのクロッシング

今回も岡村心平さんによる6つのメソッドを通じたクロッシングから始まりました。 今回までの三回を通すなかで、各論としての「フォーカシング」や「瞑想」「ロルフィング」ではなく、総論としてそもそも私たちが“ボディワークをどんな風に学んでいったらいいのか?”“どんな風にワークショップと関わっていくことで一番旨味を得られるか?”という点も、今回学んでいけたら、ということをお話しされました。

本日の内容は以下の通りです。

  • 「感覚の教育」としてのボディワーク

・ワーク①「割り箸を使ったワーク」

・ワーク②「骨盤のワーク」

  • メインテーマ「つながる」:筋膜のつながり

・ワーク③「竹ヒゴを使ったワーク」

・藤本先生とディスカッション

 

  • 「感覚の教育」としてのボディワーク

今回のmethodでキーとなるのが「ボディワーク」です。藤本先生はこの言葉に馴染みがない人に説明をするときは、ボディワークとは「感覚の教育」であると説明されるそうです。筋肉を例に挙げ、筋肉を強く大きくするために鍛えるのがスポーツジムでの「トレーニング」とすると、筋肉を柔らかくして使いやすくするのが「ボディワーク」だそうです。筋トレでは筋肉を柔らかくして使いやすくすることはできず、“筋肉の感覚を自分で体験していく”ことが大切だそうです。これを実感してもらうために早速ワークを行いました。

 

ワーク①「割り箸を使ったワーク」:顎の筋肉を緩める

このワークは、口の深い部分にある顎の筋肉の固まりに意識を向けるワークです。普段この筋肉は固まっており自分自身でも固まっていることにも気づいていないとのことです。 ワークでは寝転がって片方の奥歯に割り箸をくわえて、それによって生じる感覚の違いを確かめます。

これは筋トレやストレッチではありません。顎の奥に筋肉がある、という感覚を持つことが大切です。そして、この感覚への気づきが脳に刺激として伝わります。脳は「こんなに固まっていたんだ」と理解し、「こっちの顎もこんなに固まっている必要はないな」と、割り箸を挟んでいない方の顎にもその緩みが伝わっていくようです。

ボディワークでは左右のうち片方にだけワークを行って、行っていない方との感覚の違いを味わう作業をよくするともお話しされていました。固まっていることに気づいていない身体にとって、顎を緩めるという行為はピンときません。そこで片方の筋肉だけを緩めてみて、初めて普段との差を感じることができると話されていました。

 

ワーク②「骨盤のワーク」:新たな動き――オプションの提案

ボディワークをするときに、何も感じられない、どう違うのかがわからない、という体験をする場合も起こりえます。そんな時、やり方が間違っているのだろうか? 感じられない自分は変なのか? そう思ってしまうことも多いかもしれません。しかし、それはその人なりの身体の歴史があって感覚を理解することが難しくなっているケースもあると藤本先生は説明されました。では、感覚が体験できない場合はどうしていけばいいのか? という疑問が浮かび上がると思います。その問いについての考え方を骨盤のワークを通して学んでいきます。

あらゆる関節は三次元の動きができると言われています。けれど、現代生活は平面的な動きが主となり、三次元の本来的な動きを忘れてしまっていて、そのことでバランスが悪くなっているそうです。そこで骨盤を例にその動きをそれぞれ確認していきました。

姿勢のことを考える時に骨盤が基本です。しかし、どこが“良い位置”か、ということはなかなか分かりにくいものです。そして自分が気付いていない“良い位置”を自力で探すのは難しい作業です。藤本先生はこの点に関する一つの示唆として、今までやっていたパターンと異なるパターン:“オプション”を提案するということを教えてくださいました。脳はやったことがない動きに関しては動かし方がわかりません。しかし、その動きを覚えることで新たな可能性が生まれるかもしれません。それが整体などの施術と異なる点だと話します。

  • メインテーマ「つながる」:筋膜のつながり

前半はボディーワークとは一体何なのか、身体を通したワークにおいて大切な視点は何なのかということを中心に勉強しました。後半は今回のメインテーマである「つながる」について体験的に学ぶ時間です。今回は「筋膜による身体のつながり」を学びました。

まずは筋膜についての理解を深めるため、藤本先生は筋肉をタオルに、そして筋膜をサランラップにたとえて説明してくださいました。筋膜とは筋肉を包んでいる膜のことを指し、この膜があることで筋肉は自由に伸縮できるスペースを持つことができます。しかし、この筋膜が縮んでくっついてしまうことで筋肉が伸び縮みできなくなってしまいます。

そしてこの筋膜は、筋肉だけではなく胃などの臓器も包んでいます。このため、胃の筋膜が縮んで癒着していると胃の調子も悪くなるそうです。さらに、身体全体を包む筋膜も存在し、一部が動くことで身体の他の部位も連動して動くことができます。つまり筋膜は臓器のスペースを作って臓器がしっかりと機能することができるようにすること、身体の各臓器をつなぐという二つの役割を持っていると言えるようです。

筋膜の縮みを治すための考え方は様々で、強い圧力をかけて伸ばさないといけないという考え方や、筋膜の中にはセンサーがたくさんあり、そのセンサーに刺激を与えることで、縮んで機能を見失っていた筋膜が反応し伸びていくという考え方があるそうです。どのようにして筋膜の縮みを伸ばしていくかは、まだまだ研究の余地があるようですが、少なくとも筋膜の癒着の多くは内臓で生じていることは分かってきているそうです。また、内臓の癒着が全体へと広がって筋肉の癒着に繋がるため、身体の繋がりを取り戻すには内臓の筋膜の癒着を改善することが望ましいと考えられています。

そして、この内臓の筋膜はとても薄いらしく、強く圧力をかけるアプローチよりもバランスを整えるアプローチが良いのではないかと考えられています。藤本先生は後者の立場に立ち、センサーに刺激を与えてバランスを調整する方法で筋膜にアプローチをされているとのことでした。

 

ワーク③「竹ヒゴを使ったワーク」:筋膜の感覚を知る――膜モード

筋膜の感覚を知るワークとして竹ヒゴを使ったワークを体験しました。今回、竹ヒゴは1.5mm × 25cmのものを使用されました(藤本先生がいろいろと検討した結果この大きさのものがちょうど良いとのことです。)。このワークは竹ヒゴを両手の中央で挟むという一見簡単そうに見えるワークです。しかし、実際は竹ヒゴと皮膚の間に薄皮が一枚あるような感覚を持ちながら、ふわっと持つことがポイントになります。しばらく竹ヒゴを持って身体を動かします。その後竹ヒゴを取ってみてそこに竹ヒゴがある感覚を確かめていきます。

本来、筋膜は身体全体をボディスーツのようにつながっていましたが、今はそのつながりを失ってしまっている状態で右手は右手、左手は左手と別々になってしまっています。そこで竹ヒゴという繊細なものを両手で持つことで、身体のつながりを取り戻すことが狙いです。また、この両手に竹ヒゴを挟んで筋膜のつながりを感じる状態を膜モードと呼び、この状態でペアの筋膜に触れることで相手の筋膜のスイッチを刺激し、自己調整を促すことにつながるようです。

 

藤本先生とディスカッション①:「感覚が来るまで待つ」

様々なボディワークを体験したmethod3「つながる」でしたが、ワークのシェアリングのなかで藤本先生と心平さんのディスカッションも非常に興味深い内容でした。特に私が面白かった内容は、「感覚を探しに行くのではなく、感覚の方からやってくるのを待つ」という話題でした。

藤本先生が大切にされていることはボディワークを通した“感覚の教育”に加え、身体に新たなオプションを提案しているということでした。 このオプションというのは、それが正解というわけではなく、その人にとっての可能性の広がりであるとおっしゃっています。

それに対し心平さんは、新しいオプションに対して、選択の時間を取るという発想が大切なのではないかとコメントされました。

藤本先生はさらにそのコメントを受け、選択の時間を取るということ、つまり待つことは、オプションを与えてそれを身体がどう反応するかを吟味するスペースを提案していることでもあると話されました。感覚を扱う場合は何が正解か、どれが正解か、ということを頭で考えて理解するのではなく、感覚それ自体が浮かび上がるまで待つのだとお話しされました。method 1では“フェルトセンス”という感覚を、そして、method 2では感覚も含めて“浮かび上がってくる様々なもの”を扱っています。この感覚を扱っていく作業はフォーカシング、手動瞑想、ボディワークと、一つ一つアプローチの仕方は異なります。しかし、感覚を扱うという点では共通しており、その感覚とのインタラクションで大切な態度の一つとして“待つ”ことは大切なのだろうなと感じました。

 

 

藤本先生とディスカッション②:「人を安心させる在り方」

そして、もう一つ、興味深いディスカッションは「人を安心させる在り方」についてです。世の中には、言っていることは鋭く、きつい言葉を話すけれども、なぜかそんなに不快な気持ちにならない人がいる、という話になりました。藤本先生がこれまでに対談されてきた有名人の方の中には、見た目や言葉ではなく人をリラックスさせる、ホッとした感覚にさせる人がいるそうです。何故このような現象が起こるのか? この疑問を紐解く上で神経的、生理的な視点がキーポイントとなるようです。この視点に基づいて藤本先生が注目するのは”舌”です。舌は呼吸や嚥下、コミュニケーションに関わっています。赤ちゃんの時は柔軟性のある舌ですが、大人になるにつれて言いたいことが言えなくなることでどんどんと固まっていってしまいます。この「舌がどう神経的に関係しているか」……とても興味深いのですが、今後研究成果としてまとめられるそうなので、ぜひそのご報告を待ちたいなと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

★ 日常とSkoleのクロッシング:

違いがあるからこそ気づくことができる

by Koshikawa, Y.

「大切なものは失ってから気づく」という言葉をよく耳にすると思います。日常において、当たり前のように起こっていることは、自分の手から消えてしまった後にこそ大切さが分かる、という意味です。この言葉にあるように、日常的に生じて当たり前となっているものに対して、何のきっかけもなしに、そのことに気づくということは難しいのだと思います。前半のワークでは、身体が気づいていないことを気づくためには、今までの感覚と変わった後の感覚の違いを確かめることが大切だ、ということをお話しされました。

つまり、何か比較するものがあって初めて今の自分を知ることができるし、自分はこうだったんだと理解することができるのだと思います。Skoleのテーマになっている「明日が変わる」ことを気づくためには、昨日と違う今日があることに気づけることも大切になってくるのではないのかなと感じました。そして今回のmethod「つなぐ」を通して、昨日と今日、今日と明日のつながりを気づくための違いを感じる視点と、それをつかむための身体の繊細さとはどういうものかを体験的に学ぶことができたのだと思いました。今日は昨日と何が違うのだろう、というところに目を向けてみると毎日がワクワクしながら過ごせそうではありませんか?

 

★ 日常とSkoleのクロッシング⑤:

プレゼンスを構成するための神経的、生理的要素

by Koshikawa, Y.

人とお会いした時に、「何だかほっとする雰囲気の人だな」と思ってもらえるのは、一個人としても嬉しいですし、職業柄大切だなと感じている要素です。

藤本先生と心平さんのディスカッションで在り方の話を聞いた時に、カール・ロジャーズの「プレゼンス」のことがふわっと頭に浮かんできました。プレゼンスとは、晩年のロジャーズが提唱した概念で、受容、共感、自己一致の三条件に加え、心理面接をする上での特徴として提唱した概念です。定義は人によって様々ですが、この時私に浮かんできたのは、「その人の佇まいとして話しやすい雰囲気を持って今ここにいる」でした。

臨床心理士として傾聴の仕方や様々な理論を学ぶ中で、一人の臨床家として成長していく努力をしていますが、プレゼンス(話しやすい雰囲気)は「自ら意識して作り出すことができない」ものだと感じていました。雰囲気自体はその人の持って生まれたもの、としてしまうのはなかなか辛いと感じていたけれど、今回のディスカッションに出てきた「人を安心させる在り方」に神経的、生理的な視点からアプローチできるということは、目からウロコでした。人の話を聴く、ということを生業にする者として、話の聞き方の訓練だけではなく、非言語的な部分−自分自身の身体、への理解を深めることが、成長につながる一つの足がかりになるのかなと感じました。

 

 

 

今回も非常に示唆に富んだ回でした。次回は定行俊彰先生で、methodは「ひらく」です。

さて、次回は一体どんな体験に出会うのでしょうか。

 

 

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